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アドミニでは当社の軸である不動産管理業務のほか、提案企画チームにおいてクリニックや調剤薬局などの設計・施工業務も行っています。今回は、レスキューチームから提案企画チームに移った畑本さんに、その業務内容や特徴についてインタビューしました。
提案企画チーム・一級建築士 畑本 豪孝
私たちのような管理会社が医療施設の設計を行っているのはめずらしいかもしれませんが、その経緯は、設立当初から当社のお客様に医療関係者の方が多かったことにあります。アドミニはもともとドクターの節税用マンションの管理業務からスタートした会社で、本業でお忙しいドクターに代わり、客付けや家賃回収、建物補修、修繕工事などの管理業務を行っていました。そんな中で、お客様が経営されている医療施設の小修繕についても合わせてご相談いただくようになり、今では新規開業のお手伝いをさせていただくまでになりました。以前まではそのようなご相談に、マンション修繕の傍らで対応させていただいておりましたが、近年はそのニーズがますます高まってきたため、2年前より社内でクリニック専門の提案企画チームを編成し、より柔軟に対応できるように体制を整えました。提案企画チームは、現在3名体制で、うち2名が建築士という構成になっています。
新築で建てるケースもありますが、多くは開業物件が決まっている状態でご相談をいただきます。「このビルのこの区画に小児科を開業したい」「この医療モールに薬局を出店したい」といったご相談に対して、建物形状や給排水設備の位置などの制限を考慮しながら、院内動線や設備機器の配置を検討していきます。ただし、一口に“クリニックの設計”と言っても、診療科目や治療内容、ドクターの診療スタイルによって空間の使い方は大きく異なります。例えば、予約制のクリニックなら待合室を小さくする、リハビリに力を入れたいなら処置スペースを広めに設ける、レントゲン室が必要なら放射線の遮へい方法を考えるなど、お客様の診療スタイルや理想のクリニック像を理解したうえで、働く方にとっても患者様にとっても快適な空間をつくっていきます。
設計というと、ついデザインや間取りばかりに目が行きがちですが、私たちはビジネスとしての側面も大切にしています。マンションの経営もそうですが、ビジネスである以上、まずは事業を存続していくことが最優先です。そのためには初期投資をできる限り抑えて開業しなければなりません。管理会社である私たちは、常にオーナー様の利益の最大化を追求していますが、それは医院経営においても同じだと思っています。特に新規開業においては、患者数の予測も立てられないので、まずは抑えられる費用は抑えて、売上が伸び、経営が安定してから段階的に投資していくようにご提案しています。例えば、受付カウンターやラック、椅子などの造作什器は、立派なものを作ろうと思えばいくらでもお金をかけられる部分です。ですが、診療に不可欠な医療機器とは違って、これらは必ずしも開業時点で必要なものではありませんし、後々の変更も難しくありません。クリニック全体の雰囲気や見栄えを損なわないように気を付けながら、椅子ひとつ、扉一枚、什器ひとつひとつのコストカットを積み重ねていけば、初期費用は大幅に抑えられます。開業に向けて前向きに準備されている相手に対して、最初からコストや事業存続の話をするのは心苦しいのですが、独立開業は未来を懸けた一世一代の大勝負なので、少しでもリスクを軽減できるよう、強くアドバイスさせていただいております。
先ほど、初期投資を抑えるお話をしましたが、単に「いま現在の安さ」にこだわれば良いというわけではありません。5年後、10年後にかかる将来的なメンテナンスコストを含めて総合的に考える必要があります。例えば、多少コストがかかったとしても、劣化しやすい部分に手入れしやすい素材を使ったり、メンテナンスしやすい構造を採用することは、長い目で見れば価値の高い投資です。当社では、経年劣化を予測し、長く安定的に使い続けられるようなプランを考えておりますが、そこにはレスキューでの現場経験を大いに活かせています。
私はレスキューチームにおいて、建物に関するトラブルを専門で担当してきました。漏水や排水溝の詰まりなど、入居者様の日常生活に関わるお困りごとを扱っていたので、ご連絡を受けたらすぐに現場に駆けつけ、その場で解決しなければなりませんでした。さまざまなトラブルを目の当たりにし、自分の力不足に何度も悔しい思いをしてきましたが、今ではお困りごとの7割近くは現場を見なくても原因を特定できますし、お電話越しでも解決まで導くことができます。設計プランをご提案する際には、レスキューでの現場経験をもとに、建物や設備の経年劣化がどのように進むのか、長い目で見てどうすれば安心なのかをお伝えさせていただきますが、お客様から「なるほど」「とてもわかりやすい」とお褒めいただきます。このように、現場での生の体験からご提案できることは、私が設計士として働くうえで大きな自信につながっています。このスキルは、紛れもなく入居者様との直接の関わりから得られたものであり、もし私が設計の仕事だけをしてきたり、新築の現場だけを見てきた設計士だったら、恐らくそのようなお話はできないかと思います。
現状で最も大きな課題は、今後の設計業務を担う人材が足りていないことです。設計の仕事は「作ったら終わり」ではなく、むしろ「作ってからがスタート」で、将来的にその物件で起こるお困りごとにも、責任を持って対応していかなくてはなりません。クリニック経営にしても、マンション経営にしても、今後どんどん世代交代が進んでいきます。私がアドミニで働き始めてから20数年になりますが、すでにご子息にクリニックを承継された方や、マンションオーナー様だと3代目になられた方も数名いらっしゃいます。ですから、当社も同じように、若い設計士を育てて世代交代していき、お客様を繋いでいかなければならないし、それが私の使命だと思っています。私は定年まであと10年ほどですが、既存の若手メンバーに私たち世代以上の活躍をしてもらうために、彼らの一級建築士の資格取得を支援していきたいですし、彼らを支えるさらに若い人材もたくさん採用していきたいと考えています。採用に関しては、やはり当社は設計事務所ではないので、どうしても設計士を目指す人材を確保しづらい部分はありますが、私自身は「管理業務あってこその今の自分」だと実感していますし、それが自信にもなっているので、“設計士が管理会社で働くメリット”を伝えていけたらと思っています。
実は、目標ということでいえば、「クリニックで売上を〇〇円上げる」とか「調剤薬局を年間〇件受注する」などといったことは掲げていません。そうではなく、自分や会社、私たちの仕事を気に入ってくださるお客様を増やしていくことが重要で、自分たちのファンが増えれば、自ずと仲間も増えるし、お仕事の幅もどんどん広がっていくと私は考えています。代表の影山が掲げている「アドミニ村を作っていこう」というところにも通じますが、私たちはお客様にとっての“安心できる存在”でありたいと思っています。そのためには、目の前のお客様からのご相談に全力で取り組み、そのお客様と末永くお付き合いさせていただくことが何よりも大切です。現在私たちがこうして、お客様からクリニックや薬局の設計についてご相談やご紹介をいただけているのも、ベースである管理業務でお客様にご満足いただけているからだと思います。だからこそ、お客様一人ひとりと信頼関係を深めていく姿勢を忘れないようにしたいと思っています。
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